2022年のAITCニュースをふりかえって

新しい試みも増え、プロジェクト規模も拡大

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ニュースリリースから今年をふりかえる

本コラムでは、ニュースリリースから2022年をふりかえってみたいと思います。

本AITCのサイトは、以下のURLから、AITCのニュース一覧が閲覧できます。

isid-ai.jp

それらの中からピックアップしたリストが以下となります。

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それらを、以下8つのカテゴリに分類しました。

(1)HUMABUILD
(2)ISID-AI製品
(3)製造MVP
(4)Microsoft連携
(5)ライフサイエンスAI
(6)Engineering AI
(7)アジャイル開発/ 内製化
(8)学会発表・セミナー

それぞれのカテゴリ別に、今年をふりかえってみたいと思います。

カテゴリ別ふりかえり

(1) HUMABUILD

HUMABUILDはAITCが推進しているソリューションであるため、"AI人材育成サービス"と呼んでいます。しかし、実際にはもっと幅広く、“データ活用”という観点で複数のお客様を支援しています。

昨今、DX、デジタル人材、リスキリング等のキーワードをベースに「DX人材育成を推進しています」というユーザー企業のニュースが多く出ています。そのような状況のため、様々なお客様から、DX人材育成や、ITをより活用したり、内製化するための体制構築等のご相談を頂いています。事例公開させていただいたダイキン工業様や本田技研工業様だけではないプロジェクトを推進させていただいており、我々自身もよりノウハウを蓄え、広範囲にかつコンテンツを充実させることができました。

www.isid.co.jp

www.isid.co.jp

また以下のように、電通グループとしての連携も推進できました。

dentsu-ho.com

(2)ISID-AI製品

今年の3月に、お客様からご期待頂いておりました、TexAIntelligenceとOpTApfのV2をリリースしました。

● TexAIntelligence V2 www.isid.co.jp

TexAIntelligenceは、特にコールセンターや品質系の文章を利用した業務で多く利用頂いております。V2では、特にそのような業務に対して、実データセットの状態のままで精度がより出やすくする仕組みを実装しています。そのような業務領域では、どうしても文書の分類は不均衡(この領域の事象は多いが、この領域の事象は少ない)になります。そのため、データ数に偏りがあっても高い分析精度を出すことができる仕組みを取り入れました。

また扱う文書には、同義語(同一の意味だが異なる表記の単語)や専門用語(特定分野や社内で用いられる複合語)が多いことがほとんどです。同義語や専門用語は、どうしても標準の形態素解析エンジンでは、1単語の区切りをミスしてしまうことがあるため、同義語辞書と専門用語辞書の登録を行うことでそれを防止できるのですが、現場でその辞書作成をするのは継続的な努力が必要です。V2の機能を利用すれば、AIが自動で用語登録のレコメンドを行い、同義語辞書と専門用語辞書の作成を支援してくれるので、より精度を高めたいお客様は、辞書作成が今までよりもぐんと楽になりました。

● OpTApf V2

www.isid.co.jp

OpTApfのV2では、Azureの最新機能を利用することで、より様々なユースケースに対応できる異常検知のAIの実現と、評価の容易性を実現しました。ある事象の異常検知を実施したい場合、異常を異常ラベル、正常を正常ラベルとして教師あり学習して、異常検知AIを構築することがあります。しかし多くの場合、異常はほとんど発生しないため、異常の教師データが十分に準備出来ない場合が多いです。そのような場合でも正常データだけを利用し、かつ単一の時系列データだけではなく、複数の時系列データを加味した、正常データだけによる異常検知が実現できるようになりました。

またV1では、AIモデルを作った後、そのAIモデルがどのくらいの汎化性能を持っているかを、学習に全く使用していないデータで評価する必要がありますが、その評価の際に、ある程度のプログラミングによって可視化をした方が分かりやすい場合がありました。V2ではその評価に関して、プログラミング無しで評価できるようになり、予測を外した原因の考察と、継続的なモデル改善をより容易に実現できるようになりました。

● iQUAVIS × AI

また、2021年から提供を開始しておりますが、TexAIntelligenceを弊社製品であるiQUAVISと連携させた仕組みに関しては、21年のトライアルを経て、22年から本格的に実運用頂く事例も増えてきました。

mfg.isid.co.jp

現在も、様々なお客様からリクエストをいただいたり、こういう部分強化されるとより良いよねという議論を実施しています。今後とも、ISIDのAI製品をより多くのユースケースで使って頂けるよう、次のバージョンに向けての開発も進めています。

(3)製造MVP

製造MVPは製造業が抱える業界共通の課題に対し、ユースケースを基に単体でも導入可能なDXにおけるパッケージです。

monoist.itmedia.co.jp

IoTビジネス共創ラボ 第22回オンライン勉強会でお話しした内容ですが、AIを利用しようと言っても、なかなか自分の業務のどの場面にどう適用するとより良いかというところを見つけるのは難しいですし、いざ実現したいと思ってもなかなか実現までのハードルが高い場合が多いです。

iotbizlabo.connpass.com

本製造MVPは、AI利用の検討時間を短縮し、導入までの様々なハードルを下げる有効なアプローチだと思っています。本年度当初に打ち出してから、この一年でユースケースが増え、より充実してきました。

(4)Microsoft連携

「マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー 2022」において「AIアワード」を2年連続で受賞しました。

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AITCのAI製品はAzureベースの製品ですし、クラウドの利用が拡大している中、Azureが伸びていることを感じています。

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Q2 Cloud Market Grows by 29% Despite Strong Currency Headwinds; Amazon Increases its Share | Synergy Research Group

(5)ライフサイエンスAI

このようなプレスリリースを4月に実施させて頂きました。

www.isid.co.jp

これだけだと良くわからない部分もあると思いましたので、

aitc.hatenablog.com

のコラムで、このプレスリリースの背景や、我々AITCが目指している世界観に関してお話しさせていただきました。

どうしてもAIの社会実装に関して時間がかかってしまう領域ですが、着実に患者さまや医療関係者にとって活用できるAIプロジェクトを推進して行きたいと思っています。

(6)Engineering AI

一般的に、製造業向けのAIと言うと、多くは生産現場(工場内)での取り組みが多いのが実情であり、設計開発や検証業務での利用はあまり聞きません。しかし我々は、我々もお客様と一緒に設計開発を含めたエンジニアリング領域で如何にAIを適用できるかをずっと議論したり、PoCを実施してきており、その領域でのAIの適用を進めています。

その概況を纏めた記事が以下になります。

monoist.itmedia.co.jp

特に、このEngineering AIの中で我々が提唱しているジェネレーティブデザインを推進するためには、AIとCAEの両方の深い知見を有している必要があります。人の観点でも、データの観点でも非常に難易度が高いためなのか、この領域は、まだほとんど世の中にAIが適用できる領域として認知されていません。我々はこの領域へのAI適用のマーケットリーダーとして推進していきたいと思っています。

(7)アジャイル開発/ 内製化

AITCは、現時点で、AIコンサルティンググループと、AI製品開発グループの2つのチーム体制になっています。弊社ISIDはSIer(System Integrator)ですが、弊社のAI製品は、AI製品開発グループのメンバーが、本当に我々のAI製品を構築しています。本当にと言うのは、多くのSIerは自社製品と言っても他社が開発していたり、外部で構築したモノをOEM的に製品化しているものが多いからです。 そのAI製品はまさにアジャイル/スクラムで開発をしており、実際に自分達で日々運用していることから、AITCメンバーはアジャイルに関する知見が深く、その知見をお客様にコンサルティングしたり、外部に情報発信したりしています。

今年6月に、AITCメンバーが翻訳した書籍『アジャイルとスクラムによる開発手法 Azure DevOpsによるプロフェショナルスクラムの実践』(発行:マイナビ出版)が刊行されました。

www.isid.co.jp

外部へは、ディープラーニング・ラボコミュニティやTechPlayでのイベントで、その内容を発信しました。

isid-ai.jp

(8)学会発表/セミナー

AITCは研究所ではないので、ビジネスに役立つかどうかわからないというような内容の発信はしていませんが、“こういうお客様のこういう課題を解決するような技術を有することで、よりお客様の為になる”という観点で、研究開発を実施しています。

その研究開発の中で、先進的な内容で外部の皆様に有益だと想定できる内容に関しては、学会での発表もしています。以下、人工知能学会の参加報告のコラムです。

isid-ai.jp

来年も、日々の研究の成果を学会で発表していきたいと思っています。

本コラム最後ですが、今年6月に、ISID単独かつAIというテーマで

ISID AI Daysを開催しました。

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ユーザー講演として、OpTApfを導入いただいている、ジヤトコ株式会社 デジタルイノベーション推進部 兼 情報システム部 岩男 智明様と、HUMABUILDを推進させていただいている本田技研工業株式会社 完成車開発統括部 谷川 裕樹様にご登壇いただくとともに、我々自身も様々な観点でお話しさせていただいたり、技術のご紹介をさせていただきました。

ISID AI Days 2022|セミナー・イベント

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実施は完全オンラインで、Web上でのオンデマンド視聴で実施しました。非常に多くのお客様に来ていただくとともに、多くの動画コンテンツを参照いただきました。来年も、さまざまやり方を工夫しながら、実施していきたいと思っています。

来年もAITCはAIの社会実装に向けて頑張っていきます

本コラムでは、AITCニュースをベースに、AITCの2022年をふりかえってみました。最後まで読んで頂きありがとうございます。来年も、このAITCのコラムを見て頂けると嬉しいです。


執筆
AITC センター長
深谷 勇次